看護師と副業の現状
看護師の仕事は体力的・精神的に非常にハードですが、その専門スキルは多方面で高く評価されています。
近年では「看護師の収入だけでは満足な生活ができない」という声もあり、副業という選択をする看護師が増えつつあります。
実際、2023年の調査では回答者の約6割の看護師が現在何らかの副業を行っているという結果が出ています 。
副業を始める理由としては家計の補助や収入源の多様化、自己実現などが挙げられ、看護師の働き方も徐々に変化してきています。
副業を選ぶ際の考慮事項
副業を始める前に、まず現在の職場の就業規則や法律で副業が許可されているか確認しましょう。
病院によって規定は異なり、副業を全面禁止している所もあれば条件付きで許可している所もあります。
2023年の日本看護協会の調査によると、「副業・兼業を認めている」医療機関は合計63.7%に上り、逆に「全面的に禁止」している所も35.8%存在します 。
公立病院など公務員に該当する場合は法律で兼業が禁じられていることにも注意が必要です。
また、副業で得た収入に対する税金や社会保険の影響も把握しておきましょう。
例えば、副業の所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要ですし、20万円以下でも住民税の申告が必要です。税務上の手続きを怠らないようにしましょう。
さらに、副業が本業に悪影響を及ぼさないよう時間管理も重要です。
本業の勤務時間や休息を確保し、無理のない範囲で副業に取り組む計画を立てましょう。本業と副業の両立に際しては、長時間労働による健康悪化で本末転倒にならないよう十分注意する必要があります。
看護師におすすめの副業
看護師の資格や経験を活かせる副業にはさまざまなものがあります。以下に代表的なものとその概要を紹介します。
1.イベントナース
コンサートやスポーツ大会など、大勢が集まるイベント会場の救護室(医務室)で待機し、怪我人や急病人に対応する仕事です 。単発アルバイトとして人気があり、勤務の空き日に働けますが、緊急時には迅速で的確な判断力が求められます。
2.カウンセリングナース
看護師の医療知識やコミュニケーションスキルを活かして、利用者のメンタルヘルス相談や健康相談に乗る仕事です。忙しい診療現場では一人ひとりの患者に十分向き合えないことも多いですが、「1対1でじっくり寄り添いたい」という思いからカウンセラーに注目する看護師も増えています 。看護師のスキルとカウンセリング業務の相性は非常に良いと言われ 、必要な資格を取得すれば電話やオンラインで相談員として活動することも可能です。
在宅でできる副業
在宅で行える副業は、多忙な看護師にとって理想的な選択肢です。
たとえば『オンラインでの健康相談』は、自宅にいながら患者や利用者の相談に乗れる仕事で、チャットやメール・電話を通じて健康アドバイスを提供できます。
医療知識を持つ看護師だからこそできる在宅ワークとして、他にも『医療・看護分野のライティング(記事執筆)』や、『医学文書の翻訳・校正』などがあります。
これらは専門知識を求められる分野ですが、その分ニーズも高く、在宅で比較的自由な時間に働ける点がメリットです。
在宅副業の利点として、勤務地に縛られず空いた時間を有効活用できることや、身体的負担が少ないことが挙げられます。
実際、求人の中には**完全出来高制で空いた時間に自由に働ける**在宅業務も多く、ノルマがなく気軽に取り組めるケースもあります 。
一方で、オンライン相談や執筆の場合は高い専門知識や文章力が必要となるため、経験を積みながらスキルアップしていく姿勢も大切です。
企業との契約による副業
医療機器メーカーや製薬会社など、看護師の専門知識を求めている企業と契約して働く副業もあります。
例えば、医療機器の使い方を病院スタッフに指導する**トレーナー業務**や、新薬の説明会で講師を務める仕事、医療系コールセンターで健康相談を受ける業務などです。
保険会社や製薬会社では薬の使用方法や健康相談に対応するために、医療知識を持つ看護師をコールセンタースタッフとして募集していることがあります。
また、非常勤で企業の産業看護師やメディカルライターとして契約するケースもあります。
製薬会社の治験関連業務や、健康グッズ開発企業のアドバイザーなど、専門知識を活かせる場は多岐にわたります。
これらの企業副業は本業のシフトに合わせて**土日や夜間のみ勤務**といった柔軟な働き方ができ、高収入を得やすいのが魅力です。
ただし、企業機密の保持や利害関係に注意する必要があるため、契約内容は十分に確認しましょう。
副業におけるリスクと対策
副業を始める際にはリスクも認識しておくことが重要です。
最大のリスクは、本業である看護師の仕事に悪影響が出てしまうことです。副業に時間や体力を取られすぎて、本業でミスが増えたりパフォーマンスが低下したりしては本末転倒です。
また、慢性的な睡眠不足や疲労蓄積により自身の健康を損ねてしまっては元も子もありません。
こうしたリスクを避けるため、副業と本業のバランスを常に意識しましょう。
副業可能な職場であっても、就業規則で「副業する場合は申請が必要」と定めているところがあります。それは労務管理上、看護師の長時間勤務による健康被害を防ぐ目的もあります。
安易に「黙っていればバレないだろう」と考えず、副業先の勤務時間や業務内容も踏まえて本業の上司と相談し、無理のない範囲で働くことが大切です 。
メンタルヘルス面のケアも必要です。
休みの日が全て副業で埋まってしまうと心身のリフレッシュ時間がなくなってしまいます。適度に休息日を設ける、趣味の時間を確保するなどしてストレスを溜め込まない工夫をしましょう。
健康管理さえしっかりしていれば、副業は看護師としてのキャリアにも良い刺激となり得ます。
副業の成功事例
副業に成功している看護師の事例を紹介します。
一つは、現役看護師がその知見を活かしてライターとして活躍している例です。
例えば、糖尿病内科と小児科のクリニックに勤務する16年目の看護師で2児の母でもあるAさんは、本業を続けながら医療・看護系のSEO記事ライターという副業に取り組んでいます。彼女は「夜勤を辞めて子どもとの時間を作りたい」というきっかけで副業を始め、看護師としての知識や好奇心旺盛な性格を活かせるライティングを選択しました。
結果、夜勤に頼らない新たな収入の柱を築きつつ、家族との時間も確保する理想的な働き方を実現しています。
その他にも、在宅医療サポートを副業にしている看護師もいます。たとえば地域の高齢者を対象に、オンラインで健康相談を受けたり自宅訪問で簡単なケアを行ったりするサービスを立ち上げ、高い評価を得ているケースがあります。看護師という専門職ならではの信頼感で利用者から感謝され、副業収入を安定させているのです。
副業を通じて新たなやりがいを見出し、本業以上に熱心に取り組むようになったという声も聞かれます。
重要なのは、どの事例にも看護師としての強みを活かしている点です。専門知識や現場経験、人と接する力などを副業でも活用することで、他の人には真似できない価値を提供できるため成功につながっています。
副業を始めるためのステップ
副業を成功させるには、準備と計画が欠かせません。
以下に、副業開始までの基本的なステップを示します。
1. 自己分析と市場リサーチ
まず自分のスキルや得意分野を書き出し、それが副業市場でどう活かせるか考えます。本業で培った専門知識は何か、趣味や興味で人より詳しいことはあるかなどを整理しましょう。
それと並行して、副業のニーズをリサーチします(例:看護師向け副業の求人サイトをチェックする、先輩に体験談を聞く)。
2. 副業アイデアの具体化と検討
やってみたい副業の候補をいくつか挙げ、それぞれ実現可能性を検討します。収入の目安や必要な時間、初期費用の有無などを比較しましょう。
例えば「夜勤バイトをする」「Webライターを始める」など候補が出たら、生活リズムに無理がないか、継続できそうかを評価します。また現在の職場の副業ルールに抵触しないかも重要な確認事項です。
3.必要な準備を行う
選んだ副業に必要な資格や登録を済ませます。
副業によっては事前に資格取得が必要な場合(カウンセラー資格など)や、開業届の提出が求められる場合もあります。
また副業用の銀行口座や確定申告の準備、本業の就業規則に従った申請(許可制の場合)など事務的な準備も忘れずに行います。
4.小さく始めて実績を作る
副業は最初から大きく稼ごうとせず、まずは小規模に始めるのがおすすめです。
クラウドソーシングで単発案件をこなすなど、小さな実績を積みながら仕事の進め方に慣れましょう 。この準備期(1~3ヶ月)に主業との両立方法を確立し、無理なく副業が回せるワークフローを作ることが大切です。
5.ネットワーク作り
副業を軌道に乗せるには人脈も有益です。
看護師仲間や職場の先輩で副業をしている人がいれば情報交換してみましょう。
また、副業内容に応じたコミュニティ(ライターならライター仲間のSNSグループなど)に参加すると、仕事紹介を受けたり有益なアドバイスをもらえたりします。
以上のステップを踏みながら少しずつ行動することで、リスクを抑えつつ副業をスタートできます。焦らず段階的にスキルと収入を伸ばしていくことが、長続きさせるコツです。
まとめ
看護師にとって副業には多彩な選択肢があり、自身のライフスタイルやキャリア目標に応じて最適なものを選ぶことが可能です。
副業を通じて看護師はその専門性を新たな形で社会に提供しながら、追加の収入源を確保できます。本業だけでは得られない経験ややりがいを感じられる点も、副業の大きな魅力でしょう。
ただし、副業を成功させるためには事前の準備と計画が欠かせません。
勤務先のルール確認から健康管理、時間配分までトータルにマネジメントする必要があります。最初は手探りでも、少しずつ実績を積み重ねていけば自信と収入の両方が着実に得られるはずです。
看護師という専門職だからこそ提供できる価値を活かしつつ、無理のない範囲でチャレンジを続けていきましょう。副業は決して楽な道ではありませんが、適切に取り組めばきっとあなたの生活とキャリアを豊かにしてくれるはずです。
コメント